吉備(きび)国は現在の岡山県全域と広島県東部、兵庫県西部にまたがる古代国家です。古来より鉄の産地として知られています。奈良時代には備前・備中・備後・美作(みまさか)の四ヶ国に分けられましたが、なかでも備前国は刀剣の産地として栄えました。
平安時代中期から後期にかけて「日本刀」と呼ばれる形式の刀剣が完成すると、備前に友成(ともなり)や正恒(まさつね)らの刀工が現れました。それ以降、吉井川の流域を中心に多くの鍛冶が居住し、中世には全国最大の刀剣生産量となりました。約500年間にわたる様々な鍛冶や流派の消長は、現存する備前刀に多くの紀年銘が残されていることから、研究の上でも非常に重要な役割を果たしています。
本展では、所蔵する備前刀を年代や流派に分けて展示し、刀工や作品の変遷を辿り、備前刀の美と見どころをわかりやすくご紹介いたします。美しい地鉄と明るく冴えた刃文など備前刀の魅力を、この機会にご覧ください。