日本刀は、武器として生まれ発達してきました。その一方で、日本刀は高位の者に対する献上物や家臣への褒美など、主に武士や貴族の間では贈答品の一つとして盛んに用いられてきました。また寺社への奉納品など、神聖なものとしても扱われています。これは日本刀が単に武器としての実用性だけではなく、武士や貴族の表道具として「美」を追求した存在であったからです。さらに今日、日本刀は「鉄の芸術」と呼ばれ、その審美性の高さから世界中の美術愛好家からも注目されています。
今回の展示では、刀工が鍛錬することで表れた鉄の層が織りなす「地鉄」と呼ばれる文様や、焼入れによって作られ刃先に浮かび上がる「刃文」の美しい形と輝きなど、日本刀の審美的な見どころにスポットを当て、その奥深い魅力をわかりやすくご紹介いたします。
日本刀には地鉄や刃文が同じものは一つとして無く、刀が作られた時代や地域、刀工によって様々なバリエーションが存在します。刀身をキャンバスに見立て、高度な審美性を日本刀の中に織り込んだ刀工の名作をご覧ください。
画像左上:兜 鉄錆地六十二間筋兜/
画像右上:目貫 海老図/
画像右中:縁頭 恵比寿大黒図 銘 大森秀知(花押)/
画像中央:拵 朱漆塗桜花文蒔絵散印籠刻鞘打刀拵/
画像下:重要文化財 脇指 無銘 伝正宗